こんにちは。
猛暑だった8月を終えて、少しずつ季節は秋めいてきました。
そんな季節の変わり目でもある9月の中旬。
私たちはSALTにて「子ども向けワークショップの作り方ワークショップ」を行いました。
SALT4Fは、「問いと学び」をコンセプトとして今年の春に新設したのですが、新型コロナウイルスの流行により、止むを得ず活動を自粛していました。しかしながら、出来うる対策を行いながら、少しずつ私たちらしい取り組みを始めようとSALT 4Fでの活動を再開することと決めました。
第一回目となる今回は、SALTに入居をしているメンバーさんと一緒に、子ども向けのワークショップをつくるワークショップを行いました。講師としてお越しいただいたのは、子ども向けに多数のワークショップを行なっているワークショップユニット「nina nino」のお二人。
▲坂口麻衣子さん(左)、山下麻里さん(右)
子どもの居場所「生の松原子どもスコーレ」(スコーレとは遊び・学び・余暇を表すギリシャ語)を運営されているお二人。お二人に、子ども向けワークショップを作るときに気をつけていることや、日頃子どもと接するときに心がけていることついて教えていただきながら、ワークショップをつくるワークショップを行いました。今回は、その様子をお届けします。
気配りではなく、目配り
ワークショップのはじめには、お二人に子どもと接する時に心がけていることについて、お話いただきました。
・「良かれ」と思って子どもたちを手伝わない
・創作過程や作品を見て自分が感じたことをそのまま伝える
・子どもたちが語るとき、よく話を聞く
言葉として聞くと「確かに」と納得するものの、実践するのはなかなか難しそうと思うようなこともありました。そんな中でも、ひときわ気になったのが、「気配りではなく、目配り」というキーワード。
私たち大人は、子どものためにあれをやってあげておこうとか、心配な気持ちから、ついあれこれとやってあげようとすることがあります。でも子どもたちが創作をしている時間は、先回りをして気配りをするのではなく、目配りをするということ。
つまり、子どもたちの小さな変化を見逃さないようにすることが大切なのだそう。
子どもたちが創作活動の中で発見したことや、動いた感情が、小さな変化として現れることを見逃さないようにすること。そしてその変化に気がついたら、その変化に対して自分が感じたことをそのまま伝える。
ささやかなことのように思うけれど、そんな時間の積み重ねを大切にしながら、子どもの体験を作り出しているのだと言います。
やりたいことではなく、なぜそれを子どもに伝えたいと思ったか
ワークショップの中では、私たちが子どもに対してやってみたいことの掘り下げを行いました。「プログラミング」「バレエ」「本にまつわること」など、私たちが好きなことや興味のあることはすぐに出てきます。
でもここで1度立ち止まって「なぜ、それをやりたいのか」と考えます。
例えばプログラミングなら、「なぜプログラミング子どもに伝えたいんだろう」という問いを繰り返します。そうすると、ものづくりの楽しさを伝えたいからだったり、ものをつくる過程の香りや触感の楽しさを体験して欲しかったりと、伝えたいことの核が見え始めます。
伝えたいことの核が見え始めたら、その核を達成するワークショップをつくっていきます。それは、もしかしたら「プログラミング」という手段を使わないという選択になるかもしれません。
つまり、私たちが目的だと思っているものは、手段の1つかもしれないということに気がつくことができるのです。
そうやって、ワークショップの中心が見えた後は、「素材」と「手法」をキーワードカードの中から選んで、アイディアを膨らませて考えたり、お互いに共有をしてフィードバックをしてみたりとディスカッションの時間を楽しみました。
自分の想像をしていないキーワードを使ってワークショップをつくっていくからこそ、普段なら考えないようなアイディアがどんどんと飛び交っていました。
掛け合わせて楽しさの魔法をかける
そして最後は、シェアオフィスで行うワークショップの醍醐味。職業も普段の活動も違うメンバー同士ペアで、アイディアを膨らませてながら1つのワークショップを作る時間もありました。
今回は2人1組でワークショップのテーマやテーマに沿った内容を作り上げていき、最終的には全体で共有をしてフィードバックをもらいました。
同じテーマについて一緒に頭を悩ませ、一緒にアイディアを出し合いながら考える時間は、短い中でもとても濃い時間だったように思います。自分の想像を超えて出てくる言葉や表現、そしてアイディアを聴きながら、それをどう実現させたらいいのかを考えることは、これから仕事や暮らしの様々な場面で必要になるのではないでしょうか。
最後は、笑いが起こる中終わったワークショップ。
1年後の未来も予想しづらく、正解のない時代。これまで共通に持っていると思っていた「当たり前」という概念が通用しない今だからこそ、考えることが必要になるのではないかと思います。その「考える」という人間の最大の特権をさらに豊かにするものは、偶然の出会いなのではないだろうかと思います。
そこに偶然居合わせた人。その時偶然目に入った風景や聞こえた音。
ふと香った香り。
そんな偶然の出会いが、「考える」ということを豊かにするのかもしれません。
だからこそ、このSALTでは子どもにとっても、そして私たち大人にとっても「考える」ことを豊かにする場所でありたい。そして、そこで生まれた思考やアイディアを持って次の時代をつくっていきたいと、そう思います。
まだまだSALTの挑戦は続きます。
また、ここで生まれるドラマを楽しみに。